● 猪名川町ゆかりの小説

 『猪名川町』という名前はお世辞にも有名とは言えない。どころか、大阪の人に聞いても知らない人は多いのではないだろうか。行政上は阪神地域であるにもかかわらずだ。隣接する自治体は、西が宝塚市、北は最近名称に“丹波”が付いた丹波篠山市、東は大阪のてっぺんである能勢町だ。全国区の地名に囲まれているが、その中に埋没しているのが現状だ。だから兵庫県の近隣では知っていても、大阪になると途端に知名度が下がる。

 そんな猪名川町ではあるが、ここを舞台にした小説がいくつかあるのをご存知だろうか。作者には直木賞作家や芥川賞候補作家もいる。


水果て著者:木辺 弘児(第87回芥川賞候補作)

 作中には屏風岩、竜神の森、阿古谷、一本松山、三蔵山、大井のバス停など、我らがなじみの地名が多く登場する。猪名川町の北田原にあったサナトリウムを舞台にくりひろげられる療養の日々。

 

 「療養所を抜け出し、池田へと向かう男女に襲いかかる暴雨!」

 

本の宣伝文句からの引用ですが、地元の方にはもちろん、それ以外にお住まいの方にも読んで頂きたいです。

 町立図書館の「猪名川町コーナー」に置いていますので、ぜひ読んでみて下さい。


逃避行著者:篠田 節子(直木賞作家)

ある事件(事故?)から家族を捨て、家を捨てて愛犬(ゴールデンリトレバー)と逃避行をすることになった主婦。帯の文句にあるように、『家族とは、幸せとは?』問う、社会派小説。

 作中に日生中央ほか、猪名川町の地名が登場する。個人的にも好きな作家ですが、昨今のペットブームの中、現代社会について考えさせられる本。ペットがいる人も、そうでない人にもお奨めの作品です。


他には上司小剣(かみつかさ しょうけん)の小説があるそうですが、私は読んだことがないので、ここでは紹介だけにさせて頂きます。